さまざまな「環境の変化」により、いま、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じています。
ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまいます。
精神科医・樺沢紫苑氏は、『ストレスフリー超大全』という著書の中で、現代社会をストレスフリーに生きる方法として、「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」を紹介した。「アドバイスを聞いてラクになった」「不安がなくなり、眠れるようになった」「今すぐにやるべきことがわかった」など、大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫るーー(この記事は2020年7月9日付け記事を再構成したものです)
30人に1人がメンタル疾患
「最近、気分が落ち込む」「うつな感じがする」「病院に行ったほうがいいのか」と、メンタル面で悩んでいる人に向けて、対処法をまとめておきましょう。
5000人を対象にしたメンタル疾患の有病率に関する大規模研究によると、うつ病の12ヵ月有病率は2.7%、躁うつ病も合わせた「いずれかの気分障害」では3.2%です。つまり、30人に1人が、ここ1年で、うつ病などの気分障害にかかっています。
一生涯でいうと、気分障害にかかる確率は7%、何らかのメンタル疾患にかかる確率は15.2%で、6人に1人はメンタル疾患にかかる計算になります。メンタル疾患なんて「他人事だ」と思っている人が多いでしょうが、そんなことはないのです。
うつ病などの気分障害に限っても、30人に1人が気分障害ですから、30人の職場、部署があれば、そこで1人はうつ病として病院にかかっていておかしくないのです。
「病院に行くべきかどうか」のポイント
「気分が憂うつでやる気が出ない。会社に行きたくないけれど、無理してなんとか出社して、ギリギリ仕事はこなせている。ネットで調べたら『うつ』の症状に当てはまっている気もするけれども、そこまでひどくないような気もする。病院に行ったほうがいいのか、それとも様子を見たほうがいいのか……」
そんな曖昧な状態の人は、案外多いのではないでしょうか。調子が悪いにしても、どのタイミングで病院を受診するのかは、非常に難しい問題です。
「鉄は熱いうちに打て」ということわざがありますが、それはうつ病の治療にもそのまま当てはまります。発症してから早くに病院に行くと、非常に短期間で症状は改善します。
何ヵ月も放置してしまうと、治療に何ヵ月もかかるようになります。半年~1年放置して、ようやく病院を受診すると、ものすごく治りにくい状態になっています。
「症状固定」という概念があります。病気が発症しているのに治療しないで放置すると、それが「当たり前」の状態となって、症状が固定してしまうのです。
そのメドは、「1年」です。具合が悪いのに、1年以上放置すると症状が固定してしまい、薬の効果も出づらくなってきます。まったく治らないわけではありませんが、非常に治りにくい状態に陥ってしまうのです。
私の経験では、発症から受診までの期間と同じくらいの期間で寛解する患者さんが多いです。1ヵ月前から調子が悪いという患者さんは、1~2回受診しただけで改善する人もいます。3ヵ月前に発症した人は3ヵ月くらいかかり、半年放置した人は半年以上かかるイメージです。
「調子が悪い」「うつ病かも」と思ったら、早めに精神科を受診したほうがよいでしょう。つらい状態を我慢すればするほど、治りにくくなります。
悩んでいるくらいなら、迷わず「診察」
メンタル疾患の患者さんを何千人も診察してきた経験では、「どうしてこんなに重症になるまで病院に来ないんだろう」という患者さんが半分以上です。ほとんどの患者さんが、我慢しすぎ、様子を見すぎて、病気をこじらせています。
普通のメンタルクリニックであれば、事前に診察の予約をしておけば、待ち時間、診察、会計まで2時間もあれば終わります。
また、内科と違って検査もそれほどではないので、診察費が何万円もかかることはありません。血液検査などをしなければ、5000円以下です。
最近は、夜間診療、休日診療をしているクリニックも増えています。2時間と数千円の診察費で、「うつ病かどうか」がハッキリするわけですから、それを何ヵ月も我慢する意味はありません。