うつ病をふるいにかける

「うつ病の症状」は、「抑うつ気分」「興味・喜びの喪失」「食欲減退、体重減少」「睡眠障害」「焦燥感」「無価値観」「集中力の減退」「自殺念慮」などです。

しかし、実際、具合が悪いうつ病の患者さんが、自分自身を客観的に観察して、うつを正しく自己診断することは困難です。

とはいえ、うつかどうか心配でしょうから、誰もが簡単にできる「自己診断」を紹介します。以下の2つの質問に、当てはまりますか?

□ この1ヵ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくありましたか?
□ この1ヵ月間、どうも物事に対して興味が湧かない、あるいは、心から楽しめない感じがよくありましたか?

「この1ヵ月間」と「よくある」かどうかが重要です。「よくある」というのは、「ほぼ毎日のようにある」という意味です。

2つの質問のうち、1つ当てはまるとうつ病の可能性があり、両方が当てはまると、うつ病の可能性が約88%となりますので、精神科を受診して、専門的な診断を受けたほうがよいでしょう。

上の質問の1問目は「抑うつ気分」、2問目は「興味・喜びの喪失」という、うつ病で最も特徴的な症状をチェックしています。

この「二質問法」は、たった2つの質問ですが、非常に高い精度でうつ病をスクリーニングできる方法として、一般内科医の間でも活用されている検査です

ただし、どちらか1つに当てはまっていても、うつ病でない場合もありえます。確定診断は実際に精神科医の診察を受けないとわかりません。あくまでも「ふるいわけ」の質問なので、仮に当てはまっていても、いちいち落ち込まないようにしましょう。

自分の状態をチェックしよう

さらに、うつ病などのメンタル疾患が疑われて病院に行くべきか迷う場合は、次の4つの項目でチェックしてみてください。

(1)1週間前と比べて症状が悪化している

1ヵ月前と比べて、症状が徐々に悪化しているとするならば、それはよくない兆候です。今後も、悪化していく可能性が非常に高いからです。1ヵ月前と比べて、ほとんど変わっていない、もしくは多少は改善しているということであれば、もう少し様子を見てもいいでしょう。

(2)睡眠が悪化している

睡眠と寝起きの状態は、その人の精神状態を見事に表します。睡眠障害が1ヵ月以上続いており、改善の目処が見えない場合はよくない徴候です。

(3)一生の中で「今」が一番調子が悪い

うつ病では、今までの人生で経験したことがないほどの「つらさ」「調子の悪さ」を実感します。患者さんは「こんな調子の悪さは、体験したことがない」と言います。今までの人生で経験したことのないほど「最悪」だとしたら、それはメンタル疾患の可能性が高いです。

(4)仕事に行けない。会社を休む

社会人の場合、会社に行けているか。学生の場合、学校に行けているかは、とても重要な基準となります。会社や学校に行けないほど調子が悪く、しばしば休んでしまうという状態は、病院を受診すべき水準です。「会社に行きたくない! もう無理」と思ったら、病院を受診すべきです。

以上、4つの項目のうち、2項目以上に当てはまる人は、病院受診をすすめます。あるいは、(3)か(4)だけに当てはまる人も、受診したほうがいいでしょう。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
27万部を突破した『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)や、シリーズ90万部となった『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など、30冊以上の著書がある。

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