総領事館を相互に閉館命令
米中外交悪化が深刻化
米中関係が迷走している。
近年、貿易戦争、科学技術や国防要素をめぐる攻防、香港、新疆ウイグル、台湾問題、そしてコロナウイルスの発生源をめぐる口論など、両国関係は複合的、構造的に緊張の一途を辿ってきた。改善の突破口を見いだせない中、ある意味これまでとは異なる次元で、米中外交関係の悪化を露呈する事態が発生した。
米国政府が中国駐ヒューストン総領事館の閉鎖を要求すると、報復措置として、中国政府が米国駐成都総領事館の設立および運営許可を取り下げた。筆者が本稿を執筆している時点で、それぞれの総領事館はすでに相手国の要求(72時間以内)に従って閉館されている。
米国側は中国駐ヒューストン総領事館が長年スパイ活動の拠点となってきた経緯を理由に、閉鎖を命じている。一方、中国側は米国駐成都総領事館の設立、運営許可を取り下げた理由として「米国側の理不尽な行いに対する正当かつ必要な反応」だとしている。
また、なぜ成都の総領事館を選んだのかに関しては「米国駐成都総領事館の一部人員はその身分に符合しない活動に従事している。中国の内政に干渉し、中国の安全利益を損ねている。中国側はこの点について何度も申し入れをしてきた。米国側は私が何を指しているのか分かっているはずだ」(汪文斌中国外交部報道官、7月24日、定例記者会見)と回答した。
米ドナルド・トランプ大統領自身が示唆しているように、今後、米国側がさらなる中国駐米領事館の閉鎖を要求し、それに対して中国側が今回のように報復措置を取る可能性はまったく否定できない。「米国側がさらなる駐米総領事館の閉鎖を要求してきた場合、中国政府として同様の報復措置を取る準備はできている。それ以外の選択肢はない」(中国外交部課長級幹部)。