新たな火種となった
南シナ海をめぐる問題
米中関係は風雲急の状態が続いている。
中国で米国版「5・20」声明と呼ばれる「米国の中国に対する戦略的アプローチ(United States Strategic Approach to The People's Republic of China)」というレポートが5月20日に議会に提出されてから、米国は中国に対する封じ込めの措置を矢継ぎ早に打ち出している(上記のレポートの内容については、拙稿「中国人カップルと文革世代が思い寄せる「5月20日」に、米国が声明を出した理由」参照)。
それに加え7月14日、米国はさらに重大な一歩を踏み出した。
7月12日で、南シナ海での領有権を巡る中国の主張を否定した2016年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所判決から4年を迎えた。それに合わせて、マイク・ポンペオ米国務長官は13日、声明で「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」と明言した上、ハーグ仲裁裁判所の判決に「米国の立場を一致させる」と強調した。
南シナ海を巡っては、これまで米国は、同海域の領有権問題には関与せず、当事者による平和的な解決を求めるという原則を掲げてきた。しかし、今回のポンペオ長官の声明は、フィリピンやベトナムなど中国と海洋権益を争う国を支持し、中国の主張を全面否定する立場を初めて明確にした。
これに対しては中国外務省のスポークスマンは、14日の記者会見でポンペオ長官の声明に「米国が南シナ海の平和と安定を破壊している」と猛烈に反発した。
米中の間で新たな火種が生まれたわけだ。加えて、香港も米中関係を刺激する火種となっている。
7月14日、ドナルド・トランプ米大統領は、香港の自治の侵害に関わった中国政府の高官らに制裁を科す「香港自治法案」に署名し、法案が成立した。トランプ大統領は「この法律は、香港の自由消滅に関わった個人と団体に責任を負わせる、強力な新しいツールだ」と豪語している。