米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」の注目記事の要点を短時間でまとめ読みできてしまう『WSJ3分解説』。今回は、全国人民代表大会を終えた中国の動向にフォーカスします。経済に逆風が吹く中国が、香港や台湾に対してむき出しにする「危険な本性」についてWSJは警鐘を鳴らしています。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
中国が過去25年余りで初めて
GDP成長率の目標設定を破棄
「指導部はここにきて現実に屈し、強さのよりどころとしてきた国内経済が直面している問題の大きさを認めざるを得なくなった」
米有力経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は、次の記事で中国政府が置かれた厳しい状況をそのように報じています。
●「ウォール・ストリート・ジャーナル」より
>>現実に屈した習氏の成長目標、逆風の強さを認識か
中国の国会に当たる年に1度の重要会議「全国人民代表大会(全人代)」が5月22日に開催されましたが、「過去25年余りで初めて、年間の国内総生産(GDP)成長率の目標設定を見送った」(WSJ)という歴史的な転換点が訪れました。
中国政府は「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や貿易を巡る不透明感など、『予測困難な要因』が理由だと説明」(同)しましたが、WSJは「つまるところ、GDP目標の破棄は、向こう数カ月の中国経済に迫る多くのリスクがいかに大きいかを如実に示している」と分析しています。
WSJが挙げる中国が直面する二大リスクの一つは、新型コロナウイルスの感染「第2波」の襲来です。「疫学者は秋に感染拡大が再燃する可能性に警鐘を鳴らしている。そうなれば中国内外の政府は、予想以上に長期にわたる経済封鎖を余儀なくされる可能性がある」と、WSJは指摘します。
そして、WSJが挙げる二大リスクのもう一つは、「世界最大の経済国である米国との緊迫した関係が急速に悪化していること」です。
「ここ1週間だけでも、ドナルド・トランプ大統領は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)との取引に関する規制強化に動き、第一段階の貿易合意の破棄も辞さない構えを見せた。同時に、台湾の蔡英文総統を公然と支持している」
さらに、「中国にとって危険なのは、米国が中国経済を苦しめるさらなる措置を講じる可能性だ」「大統領選でトランプ氏と民主党対抗馬のジョー・バイデン氏が最も中国に厳しい候補との立ち位置を固めようとする中ではなおさらだ」と続けています。
こうした状況下で再びくすぶりつつあるのが、地政学リスクです。その震源地は、「中国が力による統治権奪取に動き出した」とWSJが指摘する香港と台湾。私たちは、世界経済の面からも安全保障の面からも、中国の「危険な本性」が先鋭化してきたことをきちんと把握しておくべきでしょう。