発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
★関連記事:発達障害の僕が発見した「気がきく人」と「無神経と思われる人」の決定的な違い​

仕事を失うと、人はどんどん孤立していく

 人間関係というのはあらゆる可能性の発生源です。仕事が回ってきたり、案件が紹介されたり、誰かを紹介されたり……世界は関係性で回っているといっても過言ではありません。

 うつで仕事を失い、どん底状態に陥ると、友達がいなくなります。それはそうです。飲み会の5000円すら出せないような状態ですべての交友関係を今まで通り保つなんてことはほとんど不可能です。人生を転げ落ちたとき、周囲から人がどんどんいなくなるあの現象は避けがたく起こるものだと思う他ありません。実際、あなただって明らかに金に困っている友人を遠巻きにしたことがあるのではないでしょうか。それはそれで仕方がない、責められるべきことかといえばそうではありません。人も金も離れるときには離れていくものです。

 その一方で自分がどん底状態にいると、「成功している友人と顔を合わせにくい」という心の働きもあるのではないでしょうか。もちろん、その気持ちが僕には痛いほどわかります。ぱりっとしたスーツを着て洒落たデザインの指が切れそうな名刺を持った友達と、人生のどん底にいるときに顔を合わせるのはとても辛いものです。

 このようにして、人は関係性という大きな可能性の根源を失っていくのです。お金がない。それだけのことが、人を孤立に向かわせる力場を避けがたく発生させる。人と人の関係性を断ち切ってしまう力をとても強く持っていることは、まず理解する必要があります。

勝率の低い「バクチ」でも、やる価値はある

 では、このどん底状態に陥ったときに人間関係を失わないためには、どうすればいいのか。対策は2つあります。

 ひとつめは、「お金がない自分と呑んでくれ」と勇気を出して相手を誘うことです。

 「ちょっと商売がうまくいってなくて、安いとこにしたいんだけど……構わない?」こう率直に聞いて、離れる人は離れる、残った人を大切にする。それしかありません。これは勝率の低いバクチを打つようなものですが、これで残った人間関係はその後のあなたを助けてくれるはずです。

 ここで見栄を張って、あるいは関係性を失いたくなくて借金を重ねてしまう人がいかに多いか、僕はよく知っています。人は、自分が所属する経済的階層から追い出されたくないのです。それは心の働きとしては極めて自然なことですが、そこにい続けるために人生を破綻させてしまうのは、本当にもったいないことです。