金融庁の首脳人事が出そろった。2年にわたり地方銀行改革に奔走した遠藤俊英・前金融庁長官が退任し、庁内きっての国際派である氷見野良三氏が新長官に就任した。新型コロナウイルスの感染拡大がいまだに収まらない中で、新長官には幾つもの難題が待ち受けている。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
「海外の金融当局者や投資家など、会って話をした人を必ずファンにして帰す」――。金融庁のある幹部は、新長官に就任した氷見野良三氏の魅力をこう語った。決して流ちょうに英語を話すわけではない。しかし、「発想そのものがユニークで、金融情勢の分析でも独自の視点を提示するところが評価されている」と、この幹部は解説する。
実際、世界の中央銀行や金融規制当局のメンバー、いわゆる「国際金融マフィア」からの信頼も厚い。グローバルな金融規制を策定するバーゼル銀行監督委員会で、日本人初となる事務局長に就任。2019年には、主要国の金融当局者が集う金融安定理事会の常設委員会議長に、これまた日本人として初めて就いた。長官になる直前までの4年間は、金融国際審議官として海外当局との折衝を担当。こうした華麗な経歴が、庁内きっての国際派と呼ばれる理由だ。
だが、現在の金融庁の最大のテーマは「地方銀行改革」。国際派の氷見野氏に、ドメスティックな地銀の課題をさばけるのかという不安の声がないわけではない。