「失敗学」「創造学」のエキスパートである中尾政之・東大大学院教授が、新著『東大式 アイデアがいままでの10倍出せる思考法』の中から、アイデアのアウトプットを増やすための「思考法」を提示する。文系人間は、とかく言葉で物事を考えがちだが、理系には「とにかく絵で考える」思考法を持つ人が多い。概念を言語化する前に、ひらめきをそのまま絵にして考える「ビジュアライズ思考」がアイデアを考えるうえで重要となる。
絵を描かないと
頭の中に物事が落ちない
理系の人間と文系の人間の大きな違いは、「絵」で考えるか、「言葉」で考えるかではないかと私は思っている。
むろん理系の人間にも、概念をとにかく数式や論理にしたがる人もいるだろう。文系の人でも、概念を座標上にプロットしてとらえたほうがわかりやすい、という人もいるかもしれない。
ただ、理系畑を歩んできた私は、やはり「絵」で理解する人間である。というより、絵を描かないと頭の中に物事が落ちない。
「りんごが2個、みかんが3個、合わせて何個?」と問われたら、「2+3=5」よりも、2個のりんごと、3個のみかんが仲良く並んでいる様子が、頭にさっと思い描かれる。
だから私のメモは、子供のスケッチ帳のようだ。先にも述べたように、私が大きめで無地の「モレスキン」ノートを愛用しているのも、絵が描きやすいからだ。
もちろん、言葉で考える思考法が悪いといっているわけではない。いいたいことをわかりやすく概念化して言葉で相手に伝える技術も、詩や俳句や和歌のように思いを美しい表現に落とし込む技術も、仕事で成功するための重要な技術だ。