日中間のつばぜり合いが、ヒートアップする沖縄県の尖閣諸島。この小さな島の沖合に眠る資源を真っ先に開発する権利「先願権」を持つのは、大手商社、双日が約7割出資するうるま資源開発だ。
うるまは、1973年11月に旧日商岩井が中心となって設立された。当時は第1次オイルショックの真っただ中。資源確保に注目が集まっており、うるまの会長も、日商岩井副会長が務めるという力の入れようだった。
権利取得から3年以内に商業化できなければ、権利を失うため、2年間に及ぶ埋蔵量などの調査を経て、いざ国に試掘権を申請しようとした直後、中国が尖閣の領有権を主張。日本政府の日中関係への“配慮”から、以後40年近くにわたり、うるまへの試掘権の認可はたなざらしとなった。
現在、双日は同社エネルギー・金属部門に所属する社員1人を尖閣担当に充て、ひっそりと引き継ぎさせているという。うるまの社長もその担当者が務めている。
「若い社員も増え、うちが尖閣の鉱業権を持つことを知らない者が多くなった。実際、もはやペーパーカンパニーのような状態」と双日幹部は自嘲する。
だが、政府はここにきて、尖閣の国有化の検討を発表。エネルギー資源の探査を掲げた。
94年に経済産業省石油審議会がはじき出した、尖閣を含む沖縄周辺の日本側の海底に眠る石油や天然ガスなどの資源量は、石油換算で約32.6億バレルだ。
だが、「40年も棚上げとなり、今、試掘権が認められても、一から調査はやり直し。まだ、何がどれだけ埋まっているのか、見当もつかない」と同じ幹部。
政治に翻弄された双日の尖閣沖開発が、日の目を見るときは来るのだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)