EU(欧州連合)は、4月10日の首脳会議で、12日に設定されていたブレグジット(英国のEU離脱)の期限を10月31日まで延期することを決定した。合意無き離脱がひとまず回避され、一安心といいたいところだが、最終的に“合意無き離脱”となる可能性はむしろ高まっていくともいえる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
EUは、3月29日だった英国のEUからの離脱期限を4月12日に延期していた。が、英国がその期限に向けた議会の合意を取り付けられなかったことから、再び離脱期限を延期した。しかし、それは円滑な離脱を保証するものではない。
メイ英国首相は合意なき離脱と5月23日からの欧州議会選挙への参加を回避するために、6月30日までの離脱期限の延期を要請していた。一方、英国議会の混迷ぶりを見た、トゥスクEU大統領は10日のEU首脳会議の場で1年の延期を提案した。結果として、長期の延期に慎重だったフランスの意見を取り入れる形で10月31日までの延期とした。ただし、10月31日までの延期は、欧州議会選挙への参加が前提。参加しない場合には6月1日が離脱の期限となる。そのためには、5月22日までには離脱協定案を議会で可決しなければならない。
保守党強硬離脱派が
メイ首相の辞任を要求
当初の短期延期の要請が認められなかったことで、メイ首相の求心力のさらなる低下は避けられない。離脱が遠のいたことで、合意無き離脱も辞さない強硬離脱派は反発、メイ首相の辞任を要求している。離脱に向けた多数派形成のための与野党協議がまとまればいいのだが、当然ながらその保証はない。野党労働党のコーエン党首は、協議の継続を表明しているが、今回の離脱期限延期の経緯を英国の外交的敗北と批判している。
5月2日には、英国で地方選挙がある。保守党は労働党に世論調査で後塵を拝している。メイ首相では選挙が戦えないとみてメイ首相に対する辞任圧力は高まりそうだ。選挙前に辞任に至らなくても、地方選挙で保守党が敗れれば、辞任に追い込まれる公算は十分にある。
その場合は、離脱派の多い保守党支持者の支持をつなぎとめるために、ボリス・ジョンソンを筆頭とする強硬離脱派が首相の座に就く可能性が高い。そうなると、EUに合意なき離脱覚悟でEUに離脱協定案の見直しを迫ることもありえる。合意無き離脱回避にむけ、期限延期には柔軟な対応をみせたEUだが、離脱協定案の見直しには応じない。強硬離脱派がトップに立てば当然、欧州議会選挙にも参加しない。そうなれば6月1日に合意なき離脱を迎えることになる。