既報の通り、認可外幼稚園「A.L.C.貝塚学院」(以下、貝塚学院)などを運営する有限会社アメリカンラングエイジセンターの不透明な金の流れが明らかになっているが、週刊ダイヤモンドでは、同園の経営陣に近しい関係にあった元社員から、有力な証言を得た。破綻宣言から一転して事業譲渡へと翻ったのはなぜか、内部の複雑な組織と人間関係を解き明かす。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相馬留美)
「社内の空気が変わったのは今年に入ってからのことでした」とAさんは振り返る。なんとなくだが、“何かが変わりそうだ”という雰囲気が経営陣から漂い始め、社員の間では「経営者が交代するのかもしれない」と噂になっていた。
それから数カ月後、社員に伝えられたのは非情な「解雇通告」だった。
解雇が言い渡された日は、保護者に園の閉鎖を伝えるメールが送られたのと同じ、3月26日だった。卒園式後で子どもたちはお休みであり、同社の子会社・株式会社ドゥ・シェイルが行っていた学童保育は、後に説明する鈴江菜穂子氏の指示で臨時休業になっていた日でもあったが、緊急会議と称されて従業員が2カ所に分けられて全員召集された。
そこで渡されたのが、写真の解雇通知だ。弁護士から、「破産手続きに入るので一斉解雇する。ここでサインしてほしい」と有無を言わさずその場で迫られた。そこまで会社が切迫した状態にあったとはその場にいた誰も知らず、動揺が広がった。その際に弁護士は、会社に3億円の負債があり、その大半は貝塚学院のものだと話したという。サインをした後は、私物だけを持って出て行ってと追い出された。
Aさんはドゥ・シェイル社で学童保育事業に携わっていたため、翌日も子どもたちに会う予定だった。「翌日の27日はみんなで遠足に行く予定だったんです。それどころか、今はみんなの連絡先もわからず、お詫びすらできませんでした」とやるせない気持ちをうち明ける。
ところが同日、保護者へのメールがきっかけで、事が世にさらされたことで、経営陣は慌てふためいたようだ。今度は「解雇通告をした弁護士が解任されたらしい」と同僚から連絡が入った。この解任された弁護士は破産処理のプロであったため、何か事態が変わったのではとAさんは察した。