「失敗学」「創造学」のエキスパートである中尾政之・東大大学院教授が、新著『東大式 アイデアがいままでの10倍出せる思考法』の中から、アイデアのアウトプットを増やすための「思考法」を提示する。今回は、細部にこだわりすぎ、俯瞰で物事を考えられないゆえに大胆な改革ができない、という日本人にありがちな思考パターンの弊害について考察する。これは、今日の日本企業の弱体化の要因ともいえる、根深い問題だ。
細部にこだわりすぎて
日本企業は勢いを失った
「ものを作る能力」に関して、日本の企業はズバ抜けていると認識している方は多いだろう。
たしかに指示や依頼されたものを作る能力はズバ抜けているかもしれない。
しかし、ただいわれたことを、いわれたとおりに全部受けてしまう。そして、会社はうまくいかなくなる、というパターンが往々にしてある。
細部にこだわりすぎた結果、日本企業はバブル崩壊以降、低成長期に続き、少子高齢社会という変革期になって、大きな転換ができなくなっている。
一つのやり方を極めるのはいい。しかし、極めすぎてそのやり方が通用しなくなったとき、もはや後戻りができない。
つまり、マンネリ化である。そんな状況に陥っているビジネスが多いように思えるのだ。選択と集中をうたい、採算の取れない部門を切り離して、短期的には利益が出ても、5年後には特徴のない会社になってしまう。