ビジネスにおいて「今回は違う」という言い回しは危険なものかもしれない。だが米エヌビディアにとっては、幸いなことにそれが正確な表現といえそうだ。ビデオゲーム用画像処理半導体(GPU)の前回の製品群は肩すかしだった。Turing(チューリング)シリーズの性能を向上させたが、一つ前の製品強化に比べて期待外れと受け止められた。エヌビディアが設定した高価格水準ではなおさらだ。その上、当時はチューリングのメイン機能であるレイトレーシング技術を使うゲームは比較的少なかった。さらに悪いことに、性能向上とほぼ同じ時期に仮想通貨バブルが崩壊した。このバブルではエセリウムなどの新たなブロック生成に用いられる複雑な計算処理を行うため、「マイナー(採掘者)」がエヌビディアの半導体を買いあさっていた。チューリング半導体が初めて発売された2018年終盤までの数四半期にわたり、そうした流れが売上高を急増させた。ところがマイナーたちがその後、使用した半導体を中古市場で投げ売りし、売上高は押し下げられた。