大都会の横浜で市議会議員に立候補し、初めて選挙を戦ったとき、秋田県の人里離れた農村出身の菅義偉氏は無名の存在だった。自民党総裁選への出馬を表明した今月2日の記者会見では、「地縁も血縁もないところから、まさにゼロからのスタートでした」と振り返った。しかし菅氏には粘り強さがあった。同僚の記憶によると、菅氏は3万軒の家庭をまわり、靴を6足履きつぶしたのちに市議に当選した。それから30年以上たった今、イチゴ農家と教師の息子は世界第3位の経済大国の首相になろうとしている。菅氏は既に党所属国会議員の過半数の支持を固めており、総裁に選出されて首相の座に就くことはほぼ確実だ。ただ中国の軍事的台頭などの問題をめぐって次期首相の手腕が問われることになるのは間違いないが、菅氏は世界の舞台でそうした問題に取り組んだ経験がほとんどない。