フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが貴金属・宝飾品大手の米ティファニー買収を撤回するのは、他にもっと魅力的なブランドを見つけたからだろうか。その可能性はある。ただ、投資家が早くも別の買収対象に賭けているのは勇み足に見える。欧州一の富豪ベルナール・アルノー氏が所有するLVMHとティファニーは先週、160億ドル(約1兆6800億円)規模の買収提案取り下げを巡って互いを提訴すると表明した。買い手のLVMHは買収の成立を望んでいない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生したことから、提示価格はあまりに太っ腹に見え、LVMHは買収価格を強気で掛け合おうとしているか、あるいは買収を完全に白紙に戻そうとしているかのどちらかだ。「和解には数億ドルかかるかもしれない」と法律事務所ウィルク・アウスランダーのパートナー、マーク・クライマン氏は語る。「それでも両社はそのコストと、現行の提示価格での買収成立とを比較するだろう」