北朝鮮情勢を注視する人々はここ何週間か、同国政府が潜水艦発射型の大陸間弾道ミサイル(SLBM)の発射実験など、米大統領選挙に向けサプライズを用意しているのではないかと想像してきた。これまでのところ、こうした発射実験は実行されていない。しかし、ボートで北朝鮮入国を図ろうとしていた可能性のある韓国当局者が、北朝鮮側に銃撃されて死亡するという先週末の奇妙な事件は、朝鮮半島が依然として一触即発の状態にあることを如実に示している。ドナルド・トランプ米大統領が、国際的に華やかな脚光を浴びるために北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と「一連の首脳会談」を行っていた間も、北朝鮮政府は、核兵器と弾道ミサイルの能力の強化・拡大を執拗(しつよう)に進めてきた。ほぼ4年に及んだ米国の派手な立ち回りと、それと対照的な不十分で一貫性のない経済的・政治的な北朝鮮への圧力を経て、11月3日の米大統領選挙が迫る中で北朝鮮が再び米政府よりもしたたかな対応を見せたことが明白になっている。苦戦を強いられているトランプ氏の選挙キャンペーンを支援する「10月のサプライズ」として、トランプ氏と金氏の4回目の首脳会談が実現する可能性は残る。しかし、そうした茶番劇は大統領にとって、自らの品位を下げる行動となるだろう。