レビュー
コロナ禍で多くの企業が苦戦を強いられているなかでも、伸び続けている企業がある。ワークマンはその筆頭というべき企業だろう。もともと職人向けの作業服専門店であったが、まったく同じ商品を、一般人向けの売り方に変えただけで、売り上げを急増させている。本書『ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか』は、著者である記者の酒井大輔氏の視点から、アパレル界に革命を起こしたワークマンの快進撃の秘密を紐解いたものだ。
「売り方を変えただけ」というと単純な戦略であるように思われるが、実際の舞台裏の動きは想像よりもずっと緻密だ。職人向けの商品が一般の人にも受け入れられるのではないかと考えるに至った軌跡、新しい業態へ挑戦するために行った社内改革、低価格で高機能に徹底的にこだわり続ける企業努力など、ワークマンが新しい時代に合わせて果敢に変化していったことがうかがえる。その真面目なものづくりへの姿勢を知ると、「ワークマンに行ってみたい」と思うに違いない。
経験と勘だけで運営していたワークマン全体がデータ分析に強くなった「デジタルワークマンプロジェクト」、日本初の驚きの物流網システム「善意型SCM」、熱心な本物のファンと一緒に商品を開発する「商品開発アンバサダー」など、様々なアイデアや逆転の発想がワークマンの成長に寄与している。会社を変えて新しいことに取り組もうとするその姿勢は、多くのビジネスパーソンに気づきを与えてくれることだろう。(島田 遼)