うまくいかない治療、そしてコロナ禍

 体外受精をスタートしたが、順調とは言い難かった。採卵に臨んだものの、受精卵ができたのは11回中4回。そのうち3回移植したものの、いずれも着床には至らなかった。
 
「検査した結果、私の卵巣年齢は実年齢よりも15歳ほど上とわかったんです。生理痛が人よりちょっとひどいかなと思うくらいで、生理不順でもなかった。自分としては普通に働いて、普通に生活を送ってきたつもりだけど、もっとストレスを減らしていれば結果は違ったかもしれない。後悔する気持ちがないわけではありません」
 
 2020年は不妊治療をしている人たちにとっても悩み深い年になった。コロナ禍の影響もあり、体外移植を控えている医院も多いという。体外受精を始めてから3年。ユウコさんは現在、2つの受精卵を貯めている状態で、移植には至っていない。しかし、時間は過ぎていく。

 続く妊活の中で、夫婦の考え方に変化はあったのだろうか。
 
「経過は逐一報告しているので、夫の危機感は高まってきていますね。『僕がもっと早く真剣になっていれば』って、自分を責めるような言葉も出てきて。でも過ぎた時間は取り戻せないし、なるようにしかならない。落ち込んでも結果が出るわけじゃないので、いまは粛々とやれることをやっていこうと」
 
 私はメンタルが強いのだけが取り柄なので、とユウコさんは穏やかにほほ笑む。

感覚が合うからうまくやっていけている

 知り合ってから20年以上たつ2人。友人、恋人、夫婦と経てきて、変わらず仲が良い理由について聞いてみると、「なんだろう…」とちょっと首を傾げた。
 
「お互いを尊重するというのはあるかもしれません。言いたいことはちゃんと言う。不満もその場で伝えるようにして、コミュニケーションはオンラインでもオフラインでもこまめに取っているかな。金銭感覚や価値観を共有するとか、嘘はつかないとか、前提条件をしっかりとそろえつつ。あとは、お互いにひとりの時間を大切にしたいほうなので、適度に放っておくとか(笑)」

「ひとりでもそれなりに機嫌良く過ごせるけど、ふたりで生活するからには、ふたりだからこそ共有できる時間を大切にしたい。一緒にご飯を食べて『これおいしいね』とか、映画を見て『あの場面最高だったよね』とか…何げない日常に喜びを感じられるのは、ありがたいことなんだろうと思います」
 
 シンプルなことだが、全ての夫婦ができるかというとそうでもない。コミュニケーションを密にとるのは相手に知ってほしいという願望があるからだし、相手の話に耳を傾けられるのは興味があるからだ。20年間、特にケンカもなく過ごすには必要なことなのだろう。
 
 最後に、これからの2人の生活について聞いてみた。
 
「特に話し合ってはいませんね。妊活についてはお金のこともあるけど、年齢的に続けられるまで続けていこう、と思っています。42、3歳とか……そのときになればいずれ決断しなければならないタイミングが来るだろう、と。たとえ、2人だけの生活だとしても楽しいですし。夫は地元にいずれ戻りたい、という気持ちがあるみたいなので、そのときは仕事のこともあるし、東京と二拠点生活っていうのもいいかな」
 
 これからも静かに、穏やかに日々を紡いでいく。