まずは、自分自身に自覚的になり、自分が何者であるかを認識する。次に、世界の状況を俯瞰し、どんな潮流の中にいるかを理解する。さらには、自分には想像している以上に多くの選択肢があることを自覚する。そして最後に、自分の選択による影響について考え、その責任を持つようにする。

◇新しいパラダイムへの転換をリードする

 パラダイムとは思想や価値観、社会観念のことである。そしてパラダイムシフトとは、そうした思考パターンの転換を意味する。各世代には特有のパラダイムがあり、戦前、戦後、団塊ジュニア世代、ミレニアル世代というように、世代の変遷とともに変化していく。

 人は新しいパラダイムを拒むものだ。本来なら理想を追求して、新たなパラダイムをつくり続けるべきだが、「通約不可能性」によってそれができない。通約不可能性とは、自分のパラダイム以外では自分の価値観を説明できなくなる状態を指す。価値観という物差しは、パラダイムが変わると機能しなくなる。だから新しいパラダイムを受け入れられないというわけだ。

 しかし、それを踏まえて、自ら新しいパラダイムへの転換をリードすることはできる。通約不可能性がある前提で、異なる価値観の世界へと橋渡ししていくのだ。そういう意識を持つことで互いの理解を深められる。このとき重要なのが「止揚(アウフヘーベン)」という考え方である。一度否定したパラダイムを全面的に捨て去るのではなく、すでにあるパラダイムがもつ優れた要素を保存し、より高い次元で活かすというものだ。

 人類の生存という究極的な問いの前では、パラダイム同士の衝突は無意味である。大局的な視点で世界の問題に向き合うことで、新しいパラダイムを受け入れられる。ひいてはそれが、真のグローバリズム、人類の一体感につながっていくにちがいない。

◇厄介な問題にどうアプローチするのか?

 複雑で厄介な問題に対処するとき、問題の種類を見誤ると解決が遠のいてしまう。トランプ政権は、それにより新型コロナウイルスの封じ込めに失敗した。

 問題の種類は4つに分類できる。1つめの「明らかな問題」は原因が明確で過去の経験から対策が講じやすい。また2つめの「込み入った問題」は何がわからないかがわかっているので、専門家に相談すれば答えは得られる。

 これに対し、3つめの「複雑な問題」は誰にも正解がわからない。問題の根源を探り、仮説検証をくり返して解決の糸口を見つけるしかない。さらに4つめの「混沌とした問題」はまさにカオスで「わかりようがない」状態である。