メディアシステム代表取締役 安田政俊
メディアシステム代表取締役 安田政俊

 「もうダメだ」――。幾度の危機を乗り越えてきた安田政俊も、そのときばかりは諦めかけた。

 会社を設立して7年目。総額1億3000万円の負債を抱え、とうとう今月中に数千万円を返済しなければならないという状況に陥ったのである。

 メディアシステムは、NHKニュースなどを流す電光掲示板の販売代理店として、1995年にスタートした。大阪出身の安田は、起業と同時に東京に進出。コミュニケーション能力には自信のあった安田だが、「関西弁での営業トークが東京ではまったく通用しなかった」と、最初の壁にぶつかる。

 亡くなった母から相続した1000万円の資本金は、従業員への最初の給料で底を突いてしまった。その後も、文字が流れる電光掲示板のニーズは増えず、売り上げがまったく上がらない状況が7年近くも続いた。

 だが安田は、この危機を目の前に、一挙に事業の方向転換を図る。自社で商品を生産するしかないと考えたのだ。

 その第1弾が、発光ダイオード(LED)を使用した、屋外用の大型ディスプレイ。これがコンサートホールやパチンコホールなどの屋外広告用ディスプレイとして大当たり。安田は1人で1億3000万円の売り上げを1週間で達成。負債を無事返済し、危機を回避した。

 LEDは照明の一種で、白熱灯や蛍光灯に比べて屋外でも明るく見やすいなどの特徴がある。そのため、現在では信号機などでも多く利用されている。

 OEM生産の取引先であるサムエレクトロニクス(長野県)と共同で開発した大型LEDディスプレイの販売価格は数千万円。それまで、メーカーから仕入れていた電光掲示板は120万円程度だった。単価が上がり、また内製に切り替えたことで、収益が急激に伸びたのである。