西側諸国の政府が新型コロナウイルスへの対応で批判を浴びていた昨夏、欧州連合(EU)当局者はコロナ封じ込めと経済再開で先頭に立つことを目指し、ワクチン調達計画に着手した。加盟27カ国が複数のメーカーからの供給を巡りそれぞれ競い合うことは避け、EUの執行機関である欧州委員会が一元的に交渉を担い、域内の住民約4億5000万人のためにワクチンを一括購入することを決めた。交渉力を高めることで、経済規模にかかわらず、どの国も手に届く価格で平等にワクチンを入手できるようにするのが狙いだった。それから半年。深刻な供給不足が足かせとなり、EUのワクチン普及計画は足踏みを余儀なくされている。夏の終わりまでに接種できるのはほんの一部の市民にとどまる見込みだ。その理由は、まず英米に比べてワクチン発注で後手に回った。さらに、まだ結果を出せていない製薬企業の供給を当てしていた。ワクチン接種で出遅れが鮮明になると、交渉を再開するのではなく「メーカーたたき」に走ったことも裏目に出た。