クレディ・スイス・グループに所属するプライベートバンカーが裕福な顧客から資金を盗み続けていた件を巡り、同行はその兆候を数年にわたって見逃していた。スイス金融市場監督機構(FINMA)向けに法律事務所がまとめた報告書から明らかになった。このバンカーはパトリス・レスコドロン氏で、同氏は2018年、詐欺と偽造の罪で禁錮5年の判決を受けた。ジュネーブの裁判所によれば、レスコドロン氏は顧客の署名を偽造して資金を迂回(うかい)。顧客に無断で株式を購入し、1億5000万ドル(約158億円)余りの損失を生じさせていた。クレディ・スイスはこれまで、2015年9月にレスコドロン氏の詐欺行為を把握したと述べていた。だが、FINMAが2016年に委託した冒頭の報告書をウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認したところ、レスコドロン氏の行動を巡っては行内で数百回の警告が発せられたものの、(報告書の調査対象期間の)2009~15年に同行が適切な調査を行っていなかったことが分かった。