あるカーディーラーでほぼ同じフォルクスワーゲンが2台売られていて、片方がもう片方より25%も安いとしたら、安い方を買った方がよいのは明らかなはずだ。だが、驚くほど多くの投資家が、株式市場でもこれと同じロジックが成立するということを忘れているようだ。ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の普通株式(VOW)の価格は現在299ユーロ、優先株式(VOW3)は225ユーロと差(スプレッド)が開いている。後者は従来の社債型優先株ではなく、議決権がないことを除けば普通株式と同じだ。米国では2つの異なる株式の種類がある。周知の事実だが、前回このスプレッドが大きく開いたのは、2008年に持ち株会社ポルシェSEがVWの買収を狙ったときだった。この騒動では、ショートスクイーズ(踏み上げ)によってVWの時価総額が一時的に世界一に押し上げられるという経過をたどり、結局、VWがポルシェの自動車製造部門であるポルシェAGを買収。ポルシェSE(PAH3)にはVW普通株の約53%と多くの訴訟が残された。この劇的な出来事以降、VWの普通株と優先株の価格差はそれほど開くことはなかった。