株式投資をする人たちの間で大きな支持を集める話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズに答えるだけで「投資のコツ」をつかめる手軽さが人気を博し、絶賛の声が尽きない。本稿では、『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に、「半導体株を売買する際のポイント」について教えてもらった。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で勝てる人だけが知っている「半導体株の正しい買い時、売り時」Photo: Adobe Stock

※この記事では、半導体メーカー、半導体製造装置メーカー、半導体材料メーカーなど、半導体関連銘柄をすべて含めて「半導体株」と表記します。

乱高下する半導体株で、勝つためのポイント

――半導体株は個人投資家にも人気ですが、トレードで重要なポイントを教えてください。

窪田真之(以下、窪田):半導体は世界的な成長産業ですが、安定成長ではなく「シリコンサイクル」と呼ばれるブームと不況を繰り返します。

 株価を見ても、長期的には右肩上がりですが、短期では乱高下するのが特徴です。

 短期的には30%~40%も、株価が下落することもあります。

株で勝てる人だけが知っている「半導体株の正しい買い時、売り時」しばしば、30~40%の下落もあるのが半導体株の特徴
(チャートは、TradingViewより提供)

――半導体産業は成長産業なのに、なぜブームと不況を繰り返すのでしょうか?

窪田:原因をひと言で言えば、「過剰投資」です。

 最先端の半導体を誰よりも早く量産しようと多くのメーカーが競って投資し、一斉に量産に成功すると、一時的な供給過剰が生じ、半導体価格が急落して不況が起こります。

 それでも、長期的に需要は増え続けるので、いずれまた半導体ブームになります。

 そして、次世代半導体の量産競争で再び過剰投資が起きると、次の不況を招きます。この繰り返しが、シリコンサイクルです。

 個人投資家にとって、さらに重要なことは、半導体株はシリコンサイクルをおよそ半年~1年先取りして動く傾向がある点です。

株で勝てる人だけが知っている「半導体株の正しい買い時、売り時」株価は、不況を先取りする
(チャートは、TradingViewより提供)

窪田:ここが難しいところで、業績などのファンダメンタルズだけを見ていると、売買の判断が遅れてしまいます。

 不況期が来る前に株価は下落し、好況期が来る前に株価は上昇しているのです。

好況でも売り、不況でも買う

――では、何を根拠に売買すればいいのでしょうか?

窪田:チャートです。

 チャートを使ったトレードの方法については、『株トレ』で詳しく解説しているので割愛しますが、半導体ブームのさなかでも、「強い売りシグナル」が出たら、売り始めるべきです。

 また、半導体不況の真っ只中でも「強い買いシグナル」が出たら買い始めるのです。

 たとえば、2018年の前半は「半導体スーパーサイクル」という言葉が広がるほど強気ムードでした。半導体ブームが長く続くという見立てですね。

 ところが半導体株は、2018年の前半をピークに急落しました。

――2018年の年末までに、約25%も落ちていますね。

窪田:好況期にデータだけを追っていると、とても売れません。チャートの「売りシグナル」に従って売買するしかないのです。

 株価急落から遅れて2019年に半導体不況が始まりましたが、その頃にはチャートに「買いシグナル」が出ていて、落ち込んでいた株価が上昇を始めています。

 アナリストのレポートを待っていては、売りも買いも遅れてしまうのです。

コロナ禍でも同じ構図――株価はシリコンサイクルに先行

窪田:コロナ禍では在宅需要でPC関連が急伸し、2020年後半には半導体がブームになりました。

 その後、増産の反動や在庫調整で、2022年後半には半導体不況に入りました。

 ここでも、シリコンサイクルに先行して、株価が大きく動いています。

――2022年1月のピークから、2022年10月にかけて、実に40%以上も株価が下落していますね。

窪田こうした株価の派手な動きは、ファンダメンタルズを分析しているだけはついていけません。

 チャートのシグナルに従って売買するしかないのです。

半導体株こそ「チャート重視」――先取りの動きに乗る

――景気指標や業績だけで判断するのではなく、チャートでトレードすることが重要なのですね。

窪田:そもそも、一般的に株価は、景気より半年~1年ぐらい先取りして動くと言われていますよね。

 ただ、日経平均やトピックスは、必ずしも明確に景気を先取りするとは限りません。

 それは、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ株も含まれているからです。

 一方で半導体株は、シリコンサイクルをはっきりと先取りして動きます。

 だからこそ、強気のレポートが並ぶときでも「売りシグナル」が出たら売る。不況時でも「買いシグナル」が出たら買い始める。

 そうしないと、売り場も買い場も逃します。

 私は1987年に投資顧問会社で日本株ファンドマネジャー兼アナリストになりました。その時、アナリストとして最初に担当したのが半導体でした。

 その後いろいろな業種を調査しながら、半導体業界については常に考え続けてきましたが、半導体株はチャートの重要性を最もわかりやすく教えてくれるセクターだと思っています。