海上交通の要衝で立ち往生した巨大コンテナ船を離礁させるため、エンジニアが必要としたのは幸運な「星の巡り合わせ」だった。実際、その日は太陽と地球と月が一直線に並んでいた。エジプト東部のスエズ運河で座礁した大型船「エバーギブン」を移動させる作業は難航を極めた。海難救助チームは今週の満月に望みをかけた。満月の頃、潮位は通常の満潮時より数十センチ上がる。そのため全長400メートルの船体を運河の岸壁から引き離すのが容易になるはずだった。限られた可能性を最大に生かすため、エンジニアは迅速に作業する必要があった。効果が続くのはわずか2、3日。だが運河の通航を再開させるにはここでベストを尽くすしかない。