米国は韓国に対し
クアッド参加を求めている

 日米韓高官協議では、中国の台頭を念頭に、「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の懸念」についても話し合った。鄭外相が中国で会談している頃、バイデン政権の高官は、「韓国のクアッド参加をいつでも歓迎するだろう」とコメントした。

 文政権は南北対話の再開に向け米中間で綱渡りを続けているが、韓国の曖昧な姿勢を受け、クアッド参加への働きかけを公にしたということだろう。

 バイデン政権の幹部は1日、電話でのブリーフィングで「(クアッドについて)韓国の友人たちと非常に緊密に協議を行ってきた。われわれが(クアッドで)始めた(新興)技術の実務グループなど、いくつかのイニシアティブに非公式で参加する機会があるかも知れないことをはっきり伝えた」と述べた。

 韓国政府はこれまで「米国からの(クアッドへの)参加要請はなかった」と逃げ回っているが、米国は少しでも韓国が参加しやすい雰囲気を作ろうとしている。

韓国外交部による
的外れな対中認識

 最近、韓国外交部が韓国国際交流財団と共同で作成し、国会をはじめとする公共機関に配布した「地球村韓流現況」という韓流関連パンフレットに全く的外れな記述があり、物議を醸している。韓流の最も大きな市場である中国と日本を紹介する部分である。

 中国に関する部分では「56の多民族で構成された中国文化は世界で由来を見つけられないほどの文化的多様性と外来文化に対する包容力を持つに至った」と記している。

 全くあきれる記述である。中国がチベットやウイグル民族に対し行っている暴力行為、民族自立を妨げる行為はどうなっているのか。香港の自治を抹殺し、台湾もいずれ支配下に収めようとしている行為をどのように考えているのか。

 一方、日本については「日本人たちの本音と建前を理解できない外国人は日本人が陰険で信じられない民族だと誤解する場合がある」と記している。そのように感じる外国人がいるという話は、長年の外交官生活で聞いたことがなく、韓国の反日感情が言わしめているとしか考えられない。

 野党第1党「国民の力」の金起ヒョン(キム・ギヒョン)議員は「韓流文化を紹介するパンフレットを通じて外交部の屈辱的かつ無能な外交の素顔が如実に表れた」とし「中国には露骨に事大(弱い者が強い者にうまく従うの意)しながら、日本に対しては実益のない感情だけを表すことが文在寅政権の外交戦略なのか」と批判した。

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 さらに「文在寅政府は中国の歴史・文化歪曲には顔色をうかがいながら、一方では日本とは歴史問題の解決ができないまま未来志向的な韓日関係も構築することができずにいる」「外交ラインを今すぐ入れ替えなければならない」と強調した。

 筆者は外務省在職40年の間、日韓関係に従事したのはほぼその半分の期間であるが、日韓関係が対立している時でも、韓国の外交部からこのような途方もない理性を失った見解を聞いたことがない。文大統領人脈がいかに韓国国内に大きな病巣を作っているかを示す事例であろう。

 あるいは、鄭外相の就任以来、まだ日本の外相と電話会談さえできないことにいら立っているからかも知れない。しかし、日本に対し、このようなことを言っている限り、当分日韓外相電話会談も難しいのではないか。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)