尾身会長を「都合よく使う」菅政権の重罪、政府が専門家の価値を暴落させる6月3日、参議院厚生労働委員会で答弁する政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 Photo:JIJI

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に警鐘を鳴らしたことで大騒動が巻き起こっている。それに対する政府の対応はお粗末なもので、政治家としての能力不足を露呈した。今回の問題は、政府が尾身会長の専門性と権威を自分たちに都合のいい内容ばかりに使おうとしていることにある。尾身会長の扱い方いかんで、「政府が使う専門家」の価値が大きく動くことになるかもしれない。(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

コロナ対策分科会の尾身茂会長が
東京五輪のリスクを警告

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を務める尾身茂氏が、6月2日に東京オリンピックの開催の可否について問われて、「普通はない。このパンデミックで」と答えたことが波紋を呼んでいる。

 言葉を補うと「現在のようなパンデミック(感染症の大流行)の状況下では、東京オリンピックのようなイベントを開くことは、常識的には行うべきでない」という意味に解される。これまで政府の意向に沿った情報発信を行ってきて、「御用学者」などとやゆする声も一部にあった尾身氏だが、政府がやりたがっているように見える東京オリンピックの開催に明確に反対する意見を述べたことに驚きが広がった。