米国は自国史上で有数の自傷行為へと突き進んでいる。先週、それがより鮮明になった。ロシアと石油輸出国機構(OPEC)が産油量引き上げを発表したにもかかわらず、ジョー・バイデン大統領はアラスカの北極圏国立野生生物保護区(ANWR)で石油開発事業向けの土地貸与を一時停止すると発表した。バイデン氏が脱炭素で攻勢を掛けたとしても気候変動には何の影響も及ぼさない。米国が何をしようが、化石燃料に対する世界の需要はこの先何十年も増加し続けるからだ。その間、米国の驚くべき化石燃料から撤退を尻目にロシアや中国、イランはつけ込もうとするだろう。***最近まで、米国は石油供給の多くをOPECに依存していた。だが水圧破砕法(フラッキング)や水平掘削技術によってかつては回収不能と考えられていた石油や天然ガスを抽出できるようになった。ノースダコタ州やテキサス州のシェール業者は、生産量が急増した石油やガスを世界市場に放出し、OPECの供給支配体制を打ち崩した。OPECは市場への供給量を増やして米国の生産者に対抗しようとしたが、シェール業者は一段と生産効率を高めた。2019年には米国の原油生産量が2008年の2.5倍近くに達した。OPECとロシアはオイルマネーに依存する経済を支えるため、産油量を制限して価格を押し上げるしかなかった。