6月23日、「東京お台場 大江戸温泉物語」が閉館すると発表した。2003年に開業、年間100万人を集客する「温泉テーマパーク」として有名だったが、東京都との事業用定期借地権設定契約が切れるため、9月5日で営業を終了する。とはいえ 大江戸温泉物語グループの中核事業は、経営難の旅館を買収し、独自の運営モデルを投入する「旅館再生」である。2017年の「週刊ダイヤモンド」では競合の湯快リゾートや伊東園ホテルズと切磋琢磨する舞台裏を追った。当時のもようを再掲載する。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
大江戸温泉は救世主か破壊者か
「ついに別府にも大江戸ができたのか」。地元関係者は期待と不安をあらわにする。大江戸温泉物語を筆頭に、湯快リゾート、伊東園ホテルズの三大格安旅館は温泉街の救世主であり、破壊者でもあるからだ。
3社は経営難に陥った旅館を買収し、独自の運営モデルを導入する手法で店舗数を拡大している。その手に掛かれば稼働率90%も当たり前。引き取った従業員は経営マインドをたたき込むなどして育成する。こうして旅館を再生に導く点ではまさに救世主である。
一方、従来の常識を覆し、安値で攻勢をかける点では破壊者だ。
おきて破りはハードとソフトの両面ある。まず、居抜き出店だから建設費が掛からず、必要な箇所だけ修繕し、初期投資を抑える。
そして仲居は置かずに、荷物運びや布団の上げ下ろしはしない。布団は最初から客室に敷いておく。
会席料理や手間のかかる部屋食も提供しない。朝夕ともバイキングで食材費や人件費を抑えている。
しかしバイキングといっても侮るなかれ。老若男女が楽しめる和洋中の定番料理のほか、地元で捕れた新鮮な魚や特産品、郷土料理も出す。和牛やカニ、フグやフォアグラなど豪華食材も登場する。
温泉も申し分ない。買収するのはバブル期に建った旅館が多いので、立派な大浴場を備えている。
食事と温泉、二つのコアは守りつつ、手厚い接客は排除。集客は旅行会社任せにせず、自社で行う。こうして1泊2食で1万円弱~1万5000円程度を実現。伊東園に至っては、「365日同一料金」で、年中1万円以下である。都心部から直行バスを出しアクセスも格安で提供する。「安かろう悪かろう」ではない、「値段以上の満足感」を売りに、中高年グループやファミリーから人気を集めている。