修善寺中国人が購入した伊豆の旅館 筆者提供

インバウンドが増え続けていた当時、「外国人が日本の宿泊施設を買いまくっている」といった報道を目にしましたが、そのとおりで、ホテル・旅館の売買を専門とする筆者にも数々の依頼が舞い込んでいました。コロナ禍で商売は下火になっていましたが、5月以降、ワクチンのニュースが増えるのに比例して、ホテル・旅館の売買相談が急増しています。(ホテル旅館経営研究所 代表取締役所長 辻 右資)

中国人が伊豆の旅館に
4億円+2億円を投資!

 今から3年ほど前、伊豆にある高級旅館を、ある中国人投資家が購入しました。11室すべて「離れ」の隠れ家的雰囲気で、造りは純和風、美しい中庭を眺めながら浸かる露天風呂はもちろん天然温泉です。もとは大正から昭和にかけて多くの文化人が常宿にしていた由緒ある旅館で、その後、別の企業が経営していました。

 筆者が売買の仲介をしたこの物件、その中国人投資家は、4億円で現金一括購入しました。さらに、2億円を掛けて全面リニューアル工事をしています(今秋に再開業予定)。インバウンド(訪日観光客)が増え続けていた当時、「外国人が日本の宿泊施設を買いまくっている」といった報道を目にしましたが、そのとおりで、ホテル・旅館の売買を専門とする筆者のもとにも数々の依頼が舞い込んでいました。

 ところが一転、新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンドは消え去り、日本の宿泊業界は戦後最大級のダメージを受けています。筆者の商売も最悪の状況で、2020年は数件しか売買成約に至りませんでした。

 しかし5月以降、ワクチン開発と接種のニュースが増えるのに比例して、筆者のもとに問い合わせが急増しています。「今だったら買い手が付きますか」(ビジネスホテルのオーナー)、「今ならまだ安いんじゃないの? 今のうちに買っておきたい!」(アジア系投資家)などと、タイミングを待ってましたと言わんばかりに、電話やメールが矢継ぎ早に来ます。