米国のシェール業者は過去10年、原油価格が急騰するたびに思う存分に生産を増やしてきた。だが現在、原油価格が70ドルを超える中、米国内の生産量をどうにか維持する程度にとどめている。
シェール業者は長年にわたる低リターンで多くの投資家の信頼を失い、金融機関の融資枠は縮小された。資本市場も大規模な新規掘削計画にほとんど興味を示さなくなったことから、シェール業者は支出を抑え、身の丈に合った財務運営を強いられてきた。
その結果、欧米経済の再開で世界の石油・ガス価格が回復するのを横目に、シェール業者はほとんど静観に徹している。過去には、需要に応じて素早く生産量を増やすことで、石油界のスイング・プロデューサー(需給調整役)的な役割を果たしていた。
各社はこれまでになく手元資金をため込んでいる。コンサルティング会社ライスタッド・エナジーによると、主に石油を採掘する上場シェール企業の2021年1-3月期のフリーキャッシュフローは41億ドル(約4500億円)と過去最高を記録し、今後も相場が高止まりすれば年間で150億ドル近くに達する見込みだ。
だがオキシデンタル・ペトロリアムやオビンティブ(旧エンカナ)といった大手業者は、従来のようにその資金を掘削に投じるのではなく、債務削減や米国内の生産量を横ばいで維持することに注力する計画を示している。パイオニア・ナチュラル・リソーシズやデボン・エナジーなど、その他のシェール大手は、より多くの投資家を呼び戻すための手段の一つとして、変額配当(利益に応じて変額する配当)という形で投資家に還元するために資金を蓄えている。