新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、世界の政府債務は第2次世界大戦以来の高水準に達し、世界の年間総生産高を上回っている。それでも豊かな国を中心とする政府は、コロナのダメージ緩和などを目的にさらに借金を増やしている。
歳出拡大については、世界的な力強い成長の時代をもたらし、今世紀に入って多くの富裕国が感じていた停滞感を覆すと擁護する向きもある。債務に関する新たな経済学的思考もこの考えを後押ししている。しかし、そうした理論が的外れであれば、世界はインフレや高税、デフォルト(債務不履行)によってしか吸収できない債務を抱え込むことになりかねない。
いずれにしても、巨額の債務に市場が懸念を示さないのは前例がない。米政府は、2年度連続で3兆ドル(約331兆円)の財政赤字を計上する見通しだ。だが、こうした現状やインフレ懸念にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに慎重なこともあり、米10年物国債利回りは1.34%前後にとどまっている。
日本政府の債務は近く1000兆円を超える見通しだ。日本の公的債務は国内総生産(GDP)の250%を超えるにもかかわらず、政府が毎年支払う利息は公的債務がGDPの3分の2程度だった1980年代半ばと変わらない。