チェーンストア(スーパー、コンビニ等)向け棚卸アウトソーシングサービスで日本国内でトップシェアを誇るエイジスの、中国現地法人董事長、五十嵐亨司氏に、中国におけるチェーンストア店舗の棚卸事情について聞いた。

コスト削減ではなく
社内不正防止のため

五十嵐亨司 艾捷是(上海)商務服務董事長 総経理

――チェーンストアが自社で棚卸業務をやらずに、御社にアウトソースするのはなぜでしょうか?

 弊社の日本や韓国のお客様の場合は、「コストメリット」が一番の理由です。自社でやるよりコストが安い、または同じコストであれば、面倒な棚卸業務は信頼できる外部に委託しようと考えるチェーンストアが多いです。お客様自身で棚卸を行う場合、年に1回から4回の棚卸作業のための人数を予め確保しなければならないだけでなく、棚卸のための教育も随時必要となるからです。

 ところが中国の場合は、コストではなく「第三者による公正な棚卸結果を得ること」が一番の理由です。もう少し直接的な表現を使えば「不正防止」とも言えます。

 特にローカル企業は、これまで人件費が安かったこともあり、社内には人がたくさんいるため、わざわざお金を払ってまで外部に棚卸を依頼するコストメリットはあまりありませんでした。それよりも、外部に棚卸を任せることで社内不正を減らすことが一番のメリットだと考える中国ローカル企業の経営者がほとんどです。

 中国の小売店舗では業態にもよりますが、お客様の万引きよりも、店舗スタッフや店長の不正行為によるロスが少なくないのも現状です。小売業で利益を確定させるためには棚卸が必ず必要ですが、棚卸を自社の店舗スタッフにやらせると、普段から積み重ねてきた不正行為を隠すために、ウソの数字を出してくることに、経営者は強い不安を感じています。

 ただし、中国の大都市部では人件費が5年で2倍になる状況が続いており、外資・内資問わず中国の小売業の経営者達は、人件費を抑えることが競争力を高めることになると考えるようになってきました。近い将来は中国でも、コスト削減もメリットとして感じていただけるようになるでしょう。