これまでは、「売上最大化、利益最大化」が常識だった。
これからは、「売上最小化、利益最大化」が常識になるかもしれない。
株価上昇率日本一(1164%)の超効率経営
従業員一人あたり利益がトヨタ、NTT、三菱UFJ、KDDI、三井住友FGより高い
新卒初任給は日本で2番目(2021年実績)の高さ
という「北の達人コーポレーション」木下勝寿社長、
初の著書『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密
が発売たちまち5刷。中国、台湾、ベトナムからも翻訳オファー。日経新聞にも2回掲載された。
「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」
という圧倒的な商品開発でヒットを連発。
会社の弱点が一発でわかる“5段階利益管理表”
売上を半減させ、利益を1.5倍、利益率を3倍にする方法
売上ゼロでも生き残れる“無収入寿命”
組織全体にコスト意識が生まれるたった一つの方法
を記念すべき初の書籍で惜しみなく公開し、
「不況下では、売上10倍はリスク10倍」と断言する木下社長を直撃した。

【会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理」の利益4】「ABC利益」って、なあに?Photo: Adobe Stock

【利益4】ABC利益

【会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理」の利益4】「ABC利益」って、なあに?
木下勝寿(Katsuhisa Kinoshita)
株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長
1968年、神戸生まれ。株式会社リクルート勤務後、2000年に北海道特産品販売サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」を立ち上げる。2002年、株式会社北海道・シー・オー・ジェイピーを設立(2009年に株式会社北の達人コーポレーションに商号変更)。
2012年札幌証券取引所新興市場「アンビシャス」、2013年札幌証券取引所本則市場(通常市場)、2014年東京証券取引所の市場第二部(東証二部)、2015年東証一部と史上初の4年連続上場。2017年、時価総額1000億円。2019年、「市場が評価した経営者ランキング」第1位(東洋経済オンライン)。日本政府より紺綬褒章7回受章。
「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」という高品質の健康食品・化粧品で絶対に利益が出る通販モデルを確立。「北の快適工房」ブランドで、機能性表示食品「カイテキオリゴ」やギネス世界記録認定・世界売上No.1となった化粧品「ディープパッチシリーズ」などヒットを連発。売上の7割が定期購入で18年連続増収。ここ5年で売上5倍、経常利益7倍。利益率29%は、上場しているおもなEC企業平均の12倍の利益率。株価上昇率日本一(2017年、1164%)、社長在任期間中の株価上昇率ランキング日本一(2020年、113.7倍、在任期間8.4年)。日本経営合理化協会セミナー「『北の達人』他社を突き放す5つの戦略」は、参加費4万円超ながら327人が受講。本書が初の著書。
【株式会社北の達人コーポレーションHP】
https://www.kitanotatsujin.com/
【ツイッターで最新情報配信中】
https://twitter.com/kinoppirx78

 これまで紹介したとおり、「5段階利益管理」には5つの利益がある。

【利益1】売上総利益(粗利)
【利益2】純粗利(造語)
【利益3】販売利益(造語)
【利益4】ABC利益
【利益5】商品ごと営業利益

 4つ目の利益は「ABC利益」だ。

 ABCとは、アクティビティ・ベースド・コスティング(Activity-Based Costing)の略。つまり商品ごとの人件費だ。

 ABC利益=販売利益-ABC(商品ごとの人件費)

 ABC利益は、販売利益(利益3)からABC(商品ごとの人件費)を引いて求める。

 商品・サービスの販売にかかる間接コスト(人件費)を使用比率に応じて配分することで、商品・サービスごとの収益を把握できる。

 当社の場合、全社員に「商品にかかった時間」「それ以外の時間」の割合を月一回報告してもらう。

 たとえば、「商品1に30%、商品2に20%、商品3に10%、それ以外に40%」などと報告してもらい、その社員の人件費をかけ合わせ、商品ごとの人件費を算出する。

 受注処理や出荷など「きた仕事をそのまま受け、能動的に商品を選んで行動しない」という職種は、部署人件費を商品ごと売上比率で振り分ける(「それ以外」は後述の「運営費」に振り分ける)。

 販売利益1910万円-ABC190万円=ABC利益1720万
 *ABC利益率17

 販売利益600万円-ABC50万円=ABC利益550万
 *ABC利益率9

 販売利益700万円-ABC120万円=ABC利益580万
*ABC利益率19%

 販売利益610万円-ABC20万円=ABC利益590万
 *ABC利益率59

 この時点でABC利益のトップはどれだろう(本書図表21)。

【会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理」の利益4】「ABC利益」って、なあに?図表21

 商品2の販売利益は700万円、ABC利益は580万円。

 商品3の販売利益は610万円、ABC利益は590万円。

 商品3が商品2を逆転した。

 売上は高いが、ABC利益率が低いことが稀(まれ)にある。

 それは社内で手間がかかっている商品だ。

 特にサービス業ではよくある。

 商品1、2、3のABCを比較すると、商品2が120万円で最も高く、商品3が20万円と最も低い。

 つまり商品2は社内の手間が最もかかっている。

 商品3のようにABCが低い商品は、社内で話題にならない傾向がある。

 このように「売上が高く販促費もかかっていないが、社員の手間がかなり取られ、ABCが高いために利益が出ていない商品」や、「売上は低いがほったらかしでも勝手に売れるので、ABCがほとんどかからず、利益が多い商品」がある。

 社内の手間がかかる商品や事業は、そのまま人件費のコスト増につながる。

ある航空会社のケース

 ある大手航空会社が大型機を導入したとしよう。

 航空ビジネスの場合、大型機のほうが一回の飛行で多くの乗客を乗せられるから、一回あたりの売上が大きい。

 だから、大手航空会社はこぞって大型機を導入する。

 だが、ABC利益に注目すると、別の面が見えてくる。

 新型機の導入は、新しいメンテナンス方法をマスターしなければならないため、ABCが増える。

 大型機導入は、売上は増えるがABCも増えるため、売上が増えたからといって、利益がそのまま大きくなるわけではない。

 一方、LCC(格安航空会社)はなるべく少ない機種で回しているので、メンテナンスの手間が少なくABCが低い。

 だから、中小型機で一回の売上は低くても、ABC利益が高い。

 当社がABCを意識し始めたのは、北海道の特産品から健康食品、化粧品に移行する時期だ。

 北海道の特産品は商品数が多く、それぞれキャンペーンも行うため、商品ごとにかかる手間と生み出す利益に差があった。

 オリゴ糖の健康食品は定期購入で、同じ商品を同じ人に何回も買っていただくため、かかる人数も手間も少なくてすむ。そこで商品ごとのABCに注目した。

 すると、北海道の特産品より健康食品、化粧品のほうが、圧倒的にABC利益率が高くなった。

 そこでABC利益を継続的に管理することになった。

 売るために手間がかかっている商品ほど社内で話題になる。

 一方、手間がかかっていない商品は話題にすらならない。

手間がかかっている=ABCがかかっている
手間がかかっていない=ABCがかかっていない

 社内で話題になっていない商品は、ABC利益率が高いことがある。

 打合せで話題になる商品と利益が出ている商品は違うのだ。

 次回は、【利益5】商品ごと営業利益を紹介しよう。