18世紀のフランスでは、シャワーを浴びる習慣はなかった。そもそもシャワーがなく、清潔な水も不足していた。現代の感覚からすれば、革命前のフランス人は少なくとも水洗いぐらいはできただろう。特に当時は公衆衛生がお粗末で、通りには下水が流れていた。1985年に出版されたパトリック・ジュースキントの歴史小説「香水 ある人殺しの物語」では、この時代を「都市には現代人には想像もつかない悪臭が漂っていた」と表現している。しかし、フランス人は自分たちなりの方法で日々、身だしなみを整えていた。多くの人がコロンをつけ、新しいリネンのシャツに着替えていた。反対に、1世紀のローマ人は、1日に何時間も大勢で入浴していた。インドなど世界の多くの地域では、今でも近所の水場や川が体や衣服、食器を洗う場所になっている。キャサリン・アッシェンバーグが入浴の変遷を追った2008年の著書「図説 不潔の歴史」で書いているように、「清潔さは目や鼻もさることながら、見る人の心の中に存在する」。