来年(2014年)のキーワードは何かと雑誌社から問われた。もうそんな時期だ。なかなかいい言葉が思い浮かばなかったが、私がいつも繰り返し使っている言葉を伝えた。

 それは「イノベーション」だ。月並みな言葉だ。だれでも使う言葉だ。

 広辞苑によると「①刷新、新機軸②生産技術の革新だけでなく、新商品の導入、新市場・新資源の開拓、新しい経営組織の実施などを含む概念。シュンペーターが用いた。日本では技術革新という狭い意味に用いることが多い」とある。

 私は、イノベーションを「新しい価値の創造」という意味で使っている。日本の現状を見ると、あらゆる場面で新しい価値を創造していかねばならないという危機感を持っている。

 日刊ゲンダイという夕刊紙で「敗れざる者たち」というタイトルで富士フイルムをモデルにした小説を連載しているが、この会社に興味を抱いたのもイノベーションだ。

 フイルムの売り上げが劇的になくなるという危機に直面した富士フイルムは、否応無しにイノベーションを起こさねばならなくなった。それが化粧品だった。そのギャップが面白くて小説にしようと決めた。

 富士フイルムが今後とも化粧品で成功を収めるかどうかはわからない。しかし、自分の強みを生かす形で新しい価値を創造していかない限り、企業は生き延びることはできない。

 それだけは事実だ。