『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
プログラミング未経験からのエンジニア転職についての質問です。
私は現在社会人2年目の事務職として働いているのですが、昨今の未経験者からエンジニア転職というものに惹かれてしまっています。
リモートワークが出来たり給与も増えるというのは、正直今の私からすればとても羨ましいです。しかし、そんな上手い話あるのかと訝しんでもいます。しかし、実際プログラミングスクールなどはピンキリという話も聞きますが、私の知り合いにはスクールに通ってから未経験者の肩書を払拭した上でフリーランスのエンジニアとして職を得て、働いている人がいます。その人がとても楽しそうで、非常に羨ましいです。本当に羨ましいです。
しかし、そのようなスクールにお金を払う勇気が今の自分にはなく、また昨今のエンジニア転職の流れに便乗して自分も本当にエンジニアを目指してしまっていいのだろうか?と考え、一歩前に出ません。そんな、まるで思考停止している自分が嫌にもなります。
読書猿さんは、昨今のエンジニア転職についてどう思われているのか。また、エンジニアを目指すのではあればこれくらいは知っておきなさい。ということがありましたらご教授頂けないでしょうか。
今のままでは、スクールのカモにされる可能性が高いです
[読書猿の回答]
あなたが友人なら全力で止めます。理由は今のあなたではプログラミングスクールの当たり外れを判断できないだろうし、判断できないこと自体がエンジニアとしての適性の無さを示しているように思えるからです。
あなたはプログラミングで生活していけるだけの収入を得るために何が必要なのか、その業界にはどんな仕事が、会社があり、そこで働くためにはどんな能力を身につけ、また能力があることどのように証明すれば良いかをご存じないのだと思います。
未経験者だから知らないのは当たり前だ、だからこそプログラミングスクールがあるのだ、という考え方もあります。そう考える人が少なくないので、プログラミングスクールという商いが成立するのかも知れません。しかしスクールが提供してくれるのは、最良の場合ですら、あなたに必要な知識と情報のごく一部に過ぎません。
そもそも、直面している問題や実現したい目標を、いくつかに分割して(必要なだけ分割を繰り返し)、知らないことは一つずつ調べて、分からないことは調べた上で考え、最終的に解決することこそ、エンジニアの仕事に他なりません。
転職という人生の一大事について問題解決に取り組まず、外部に丸投げする人はそれだけでエンジニアとしての適性に疑問符がつきます。さらに悪いことに、「丸投げする」こと自体が「いくらでも騙せるカモである」目印となってしまうので、悪質なスクールやそれに類するものに、繰り返し喰いものにされる可能性が高まります。
逆にフルスクラッチ(totally from scratch)で問題解決しておくと、外部に何かを委託する場合にも、何をどれだけ委託するか(してよいか、したほうが良いか)、この相手に委託して良いかについて、判断材料が手に入ります。この経験は委託相手との交渉にも役に立つでしょう。これでようやく自分の人生を賭け金にした勝負をする資格が得られます。