2021年12月、「新しい資本主義」を提唱する岸田政権下で初となる税制改正大綱が策定された。「成長と分配」の実現を柱に掲げる今回の大綱は過去のものと何が違うのか。取りまとめを主導した自民党前税制調査会長の甘利明・前幹事長を直撃した。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

税制で「新しい資本主義」模索
分配が「分配を生む」流れ作る

――2022年度の与党税制改正大綱が21年12月にまとまりました。ポイントは。

甘利明・自民党前幹事長あまり・あきら/1949年生まれ、慶応大卒、ソニーを経て83年に衆議院議員に初当選、当選回数は13回を数える。労働相、経済産業相、経済再生担当相を歴任し、成長戦略や経済安全保障政策を担ってきた。自民党では政調会長や幹事長といった3役や税務調査会長といった要職を務め、現在は税調顧問

 今回の税制改正大綱では、まず21年末に期限を迎える「住宅ローン減税」を見直しました。ローン残高の1%としてきた控除率と借入金利との乖離(かいり)が指摘されていたので控除率を引き下げたのです。

 一方、新型コロナ禍からの回復という視点で、控除期間を新築で10年から13年に延長しました。固定資産税も新型コロナ禍を受け、従来の措置と比べ、税額の上昇分を半分に抑えることにしました。

 大企業によるベンチャー企業への出資を優遇する「オープンイノベーション促進税制」も拡充させました。これは企業評価額が10億ドル以上の「ユニコーン企業」を生み出していくためです。大企業とベンチャーの連携を促すことで、いわゆる「大企業病」の払拭(ふっしょく)にも役立ちます。

 しかし、これらはあくまで“微修正”にすぎません。

 今回の税制改正で最も肝心なポイントは、岸田文雄首相が提唱する「新しい資本主義」の模索を始めたということです。