将棋界のトップ棋士・渡辺明名人。ビジネスに通じる「勝つための哲学」とは?

将棋界のトップ棋士・渡辺明名人。ビジネスにも通じる「勝つため・成長するための哲学」とは?

「もう自分に伸びしろはないのか」「出世は望み薄なのか」――。若手と呼ばれる時期を脱し、30~40代に差し掛かったビジネスパーソンならば、誰しも一度は経験するであろう「伸び悩み」。そこから脱却し、再び成長するにはどんな取り組みや心構えが必要なのか。ダイヤモンド・オンラインがお届けしている、トップ棋士・渡辺明名人と経済学者・入山章栄氏の対談動画(全4回)から、そのヒントを書き起こした記事を特別公開する。藤井聡太氏と王将戦でしのぎを削る、渡辺名人の哲学とは?(ダイヤモンド編集部 濱口翔太郎)

>> 人気経済学者が各界の第一人者と対談!特集『入山章栄×超一流対談』(全9回)の動画はこちらから

他分野のプロに話を聞き
その教えを柔軟に取り入れる

 30~40代の中堅社員とは何とも悩ましい立場である。係長、課長、部長…と役職が上がるほど、気軽に相談したり、教えを請うたりできる同僚の数は減ってゆく。

 また悲しいことに、30代も後半に差し掛かると体力のピークは過ぎ、仕事をするほど成長できた日々は遠い昔である。

「もう自分に伸びしろはないのか」「経営幹部になるなど、さらなる出世は望み薄なのか」と、漠然とした不安を抱えているビジネスパーソンも多いだろう。中にはその不安の果てに、「働かないおじさん」、会社のお荷物扱いされる中高年社員になってしまう場合もある。

 意外なことに、将棋界のトップ棋士である渡辺明名人も、数年前は同じような不安を抱える状況に陥っていたという。

 今では“現役最強棋士”と称される渡辺名人だが、そのキャリアは決して順風満帆だったわけではない。2017年度の成績は21勝27敗と、2000年のプロ入り以来初の負け越しを喫している。当時の渡辺名人は33歳で、もう若手とは呼べない年齢だった。

 しかも将棋はプロスポーツとは異なり、「不調時に改善策を教えてくれるコーチはいない」(渡辺名人)。それでも不調からはい上がるため、渡辺名人は自分の「伸びしろ」を自ら作り出す作業に取り組んだ。

 その中で渡辺名人が効果を実感できたのは、「将棋とは異なるジャンルの人と会って話を聞き、参考になりそうな取り組みを試す」ことだったという。