昨年は電気自動車(EV)の年だった。世界販売台数は過去最高を記録したもようで、それに伴い電池の需要も増加している。しかし今、好材料が多すぎる余りに問題が生じている。リチウムをはじめとする多くの主要なバッテリー原料が供給不足に陥り、価格が高騰しているのだ。世界の自動車メーカーにとって地政学的リスクを高めているのが、世界のEV中心地を目指す中国に集中するサプライチェーン(供給網)である。リチウムはその最たる例だ。ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスによると、中国の炭酸リチウム価格は1年前から5倍に上昇した。ニッケルやコバルトなど他の電池材料も高騰している。新たな供給へ向けた稼働には時間がかかるため、今後も高止まりする可能性がある。コスト高が続けば、最終的には自動車メーカーに転嫁されることになる。