米労働省は1月28日、労働者の賃金が過去1年間で約4%上昇したとの報告を発表した。これは過去20年間で最大の伸びだ。この報告は、米国が「賃金と物価の上昇スパイラル」に直面しているという、予想通りの警告を引き起こした。賃金の上昇が物価を押し上げ、それがさらに大幅な賃上げ要求などにつながるというのだ。しかし、賃金と物価の上昇スパイラルは、誤った古くさい経済理論であり、それは、いまだ消え去ることなく、劣悪な政策を生み出し続けている。インフレが進む中で、賃金が悪循環で上昇することはない。物価上昇が賃金の価値を蝕むことで、実質賃金は下落する。ドル表示で見た賃金は上昇するが、物価の上昇率には追い付かないため、その実際の価値は低下する。今回の賃金上昇のニュースが流れる少し前に米政府は、昨年のインフレ率が7%に達したと発表していた。28日の労働省の発表にもっと正確な見出しを付けるとすれば、それは「実質賃金が3%低下」になるだろう。