勃起障害にL-アルギニン、高用量で2割が改善写真はイメージです Photo:123RF

 およそ10年前のデータだが、日本やイタリアなど4カ国の男性(40~70代)を対象に行われた勃起障害(ED)の有病率調査で、中等~重症のEDを自覚している日本人男性は34.5%、3人に1人という高い割合だった。

 ED治療には、バイアグラなどのPDE5阻害薬が使われる。ただ、禁忌などで利用できない人も多く、効き目が薄い男性もいるため男性不妊の治療にも使われているL-アルギニン(L-ARG)をED治療に転用する試験が行われてきた。

 イタリアの研究グループは、血管性ED患者51人に対し、3カ月間、1日6gのL-ARGを食後3回にわけて服用してもらい、プラセボを服用した47人とED症状の変化を比較した。

 試験参加者は、安定したパートナーはいるが、勃起機能問診票で軽症~重症EDと診断されている男性で年齢は20~75歳。男性ホルモンのテストステロン値や、女性化を引き起こすプロラクチン値は正常範囲に収まっていた。

 勃起機能問診票のスコア改善度と、海綿体動脈の血流速度の改善度でL-ARGの有効性を確認したところ、L-ARG群では3カ月後のスコアと血流速度の双方が有意に改善したが、プラセボ群はなんら変化を認めなかった。

 重症度別では、軽症~中等症の患者で有意な効果が示され、特に軽症の患者の24%がスコア上で「非ED」と判定され、20%で血流速度が正常範囲に改善された。一方、重症例では血流速度の改善が認められなかった。

 研究者は「高用量L-ARGは、PDE5阻害薬を使えない軽症~中等症のED男性を救う代替手段になり得る」としている。

 血管性EDは動脈硬化の影響でペニスの血流が滞り、勃起不全になるタイプだ。脂質異常症や2型糖尿病など生活習慣病持ちの中高年に多い。L-ARGには血管拡張作用があり、血流が回復することでEDが改善したと考えられる。

 L-ARGは比較的安全な成分で、成人なら1日15~20g程度は安全に摂取できる。軽症のうちに手当てをするにはいい手段だろう。何より安価だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)