ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が仕掛けたウクライナへの侵攻は、米国の同盟システムの健全性と強固さを試す機会になった。ドイツや日本など、欧州とアジアにおける米国の同盟諸国は、それぞれの安全保障の基盤となっている国際秩序を守るために立ち上がった。しかし、中東諸国の対応は、あまり意欲的ではなかった。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領から、対ロシア制裁の影響緩和の一助としてエネルギー生産拡大を求められた際、サウジとしてはロシアとの合意順守を優先したいとの考えを伝えた。米国の長年の同盟国でありながら米バイデン政権に冷遇されているアラブ首長国連邦(UAE)も、サウジと同様に冷淡な反応を示してきた。UAEは、国連安全保障理事会でのロシアの侵略行為を非難する決議案への投票で、棄権に回った。ただし、その後の国連総会での、より影響の小さい決議案では支持に回った。イスラエルは、シリアでの反ヒズボラ、反イランの軍事行動でロシアの軍当局と協調せざるを得ないことや、ロシア、ウクライナ両国と密接な関係にあることもあって、米ロのどちらをも軽視できず、米ロ間の仲介役として混乱した対応を見せている。