ロシアによるウクライナ侵攻を受けた資源価格の高騰や一連の経済制裁が、新型コロナウイルス禍からなお回復途上にある世界経済を脅かしている。金融緩和政策の解除を進める各中央銀行にとっては政策運営が一段と難しくなりそうだ。欧米諸国ではインフレ率が数十年ぶりの水準に跳ね上がっており、今も上昇に歯止めがかかっていない。世界の株式市場は売りが膨らみやすい環境にあるほか、ドルは主要通貨に対してほぼ全面高の展開となっている。安全資産とされるドル資産に資金が逃避しているためだ。エコノミストの間では、とりわけ欧州に関して、1970年代にみられたようなスタグフレーション(不況と物価上昇の併存)の懸念が高まっている。当時は原油高騰に対して複数の中銀が緩和政策で対応したことで、賃金と物価のスパイラル的な上昇を招いた。今回は、コロナ禍で導入した低金利政策の解除を目指す主要中銀の中に、利上げ計画を断念するところも出てくるかもしれない。