
イーロン・マスクは一時期トランプ政権と手を組んでいたが、効率を最優先する彼の考え方は、連邦政府の舵取りに大きな影響を与えた。イーロン・マスクがアメリカに残した負の側面を、池上彰と増田ユリヤが解き明かす。※本稿は、池上彰、増田ユリヤ『ドナルド・トランプ全解説:世界をかき回すトランプ氏が次に考えていること』(Gakken)の一部を抜粋・編集したものです。
トランプ政権から消えた
苦言を言える大人たち
第一次トランプ政権では、「大人たち」と言われる経験豊富な共和党人材が政治経験の浅いトランプの周りを固めていた。
たとえば副大統領のマイク・ペンス氏はインディアナ州知事、連邦下院議員、連邦下院予算委員長を歴任。連邦議会議事堂襲撃事件では「ペンスを吊るせ」とトランプ支持者から批判を浴びることになったが、政権末期までトランプ政権を支え続けた。
当初国防長官を務めたジェームズ・マティス氏は統合戦略軍司令官、NATO変革連合軍最高司令官、中央軍司令官を歴任した元高官であり、トランプに対して軍事力そのものや同盟国の重要性について説いてきたが、2018年12月、トランプが決定したシリア撤退に抗議する形で国防長官を辞任。トランプから「辞表を書け」と迫られての辞任だったと言われている。
だが第二次トランプ政権では、こうした豊富な経験を持ち、必要に応じてトランプにも苦言を呈することのできる人材は、政権の周囲から排除されている。
人材登用の物差しは、トランプに対する忠誠心のみであり、いかにトランプ政権らしい打ち出しができるかが閣僚の第一条件となっている。