低価格をウリにしていないアップルでさえ、細分化された顧客層に対応しなければならない。8日に行われた同社の新製品発表イベントで、そのことが明白になった。広く予想されていた通り、アップルは「iPhone(アイフォーン)」の低価格モデル「iPhone SE」の第3世代を発表。それと同時に、高性能デスクトップコンピューターの新製品「Mac Studio」を披露した。アップルのMac向けプロセッサー「M1」シリーズの究極モデルとされるチップを搭載し、価格は1599ドル(約18万5000円)から。これにはディスプレーが必要で、アップルが8日紹介した新型ディスプレーは同じく1599ドルからだ。新型デスクトップ機のセットに計3200ドルの出費を求めるというのは、大衆消費者を念頭に置いたとは言いがたい。ノートPCはかねてPC販売台数の大半を占めており、今や自宅とオフィスの共有デスクを行ったり来たりする従業員にとって、携帯可能であることの重要性は一層高まっている。だがアップルは長年、最高級の性能が問われるデザインやメディアの制作にこだわる忠実な顧客層を抱えている。さらにアップルは大きな溝を埋めるべく、日常的なデスクトップ「iMac(アイマック)」(1299ドルから)や、ハイスペックのタワー型デスクトップ「Mac Pro(マックプロ)」(6000ドルから)も提供してきた。後者の命運は危うく見える。同社は8日、新開発のチップ「M1 Ultra」を搭載したMac Studioが、インテル製チップを搭載したはるかに高価格のMac Proに比べてCPU(中央演算処理装置)性能が90%高いと指摘した。ただ、アップルのハードウエアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、ジョン・ターナス氏は同イベントで、Mac Pro向けの新型チップ開発にも取り組んでいることを認めた。