秋田駅のSuica改札機秋田駅のSuica改札機(筆者撮影)

お盆休みの帰省や旅行先で「Suicaが使えるようになっていた」と思った人がいるかもしれない。以前、記事にしたように筆者は7月10日から11日にかけて、2023年5月にSuicaを導入した盛岡、青森、秋田を旅行した。各駅の改札付近を観察したが、地域の通勤・通学移動、また新幹線からの乗り換え客にも定着しているようだった。JR東日本はどのように地方へアプローチしているのか。同社への取材をもとに、最新動向を解説する。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

2027年春にエリアをまたいだ
Suicaの利用が可能に

 JR東日本は「Suica Renaissance(スイカルネッサンス)」を掲げ、今後10年でSuicaの機能を順次グレードアップしていくと表明している。その中核となるのは、ICカードを中心にデータを管理しているシステムから、センターサーバーがデータを処理、記録するシステムへの移行だ。

 現在のSuicaシステムは「首都圏エリア」「仙台エリア」「新潟エリア」と前述の3地域(盛岡、青森、秋田)の計6つのエリアで構成されているが、エリアをまたいだ利用はできない。これは運賃計算を行うICカードと自動改札機の記憶容量に制限があるからだ。

 これを解消することで、2027年春ごろには、上野から仙台など6エリアをまたいだ利用を開始する。将来的には「Suicaアプリ」の位置情報取得機能などを活用して全線全駅でSuicaを利用可能にする計画だ。

 ただ、東日本エリアを走るのはJRだけではない。首都圏では私鉄・バス事業者の「PASMO」と相互利用を行っているが、同様に地方の私鉄やバスでもSuicaを使えるようにしなければ、1枚のカードでどこでも移動できる社会は実現しない。

 5月5日付記事では、西日本の地域鉄道・バス事業者がJR西日本の「簡易型ICOCA」を次々に導入している動きを伝えたが、JR東日本はどのように地方へアプローチしているのか。同社のマーケティング本部Suica・決済システム部門への取材をもとに最新動向を見ていこう。