国際的な商取引からロシアを締め出す米国主導の動きは、これまで30年近く米国の政策指針となってきた自由貿易構想にさらなる亀裂を生んでいる。それは各国や企業が敵対する相手との貿易から手を引き、同じ志向を持つパートナーを重視する未来へのシフトを予感させる。ロシアのウクライナ侵攻に対して米国と西欧同盟国が講じた措置は、迅速かつ懲罰的なものだ。ウラジーミル・プーチン大統領に軍を撤退させる圧力をかけるため、ロシア産の原油や天然ガス、石炭の購入を禁止または削減するなどの制裁を科している。さらに西側諸国は、ロシアの銀行を国際金融ネットワークから排除する動きを強め、米議会では、ロシアに対し世界貿易機関(WTO)の加盟停止を求めることを米政府に義務づける法案が超党派の賛成で可決された。実際に加盟停止を求めれば、WTO史上例のない事態となる。