――筆者のダン・ブルーメンソール氏は「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」のアジア研究ディレクターで、「The China Nightmare: The Grand Ambitions of a Decaying State(中国の悪夢:衰退する国家の大いなる野望」)の著者
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一般的な見方では、中国政府はロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵略戦争を支持したことで計算違いを犯したとされている。中国の習近平国家主席のパートナーであるプーチン氏は、ウクライナ軍の予想外に激しい抵抗と、西側諸国による予想外に強力な対ロ制裁に直面している。一部の米政府関係者は、中国が和平合意を仲介することで、自国への非難を回避しようとすると予想している。しかし、その可能性は低い。中国はこの戦争から多くの面で利益を得ている。ロシアが国際システムに挑戦し、それが西側諸国にとって失望すべき結果を引き起こしているためだ。
中国がロシア軍の失敗に驚いているのは確かだ。この戦争によって習氏が、中国軍の台湾攻撃能力に疑問を持つようになるのは間違いない。しかし習氏は、米国が構築した世界秩序を覆す新時代の国際関係の幕開けを、ずっと以前から画策してきた。プーチン氏は2月4日の中ロ共同声明の中で、この戦略への参加を表明した。中国の視点から見ると、国際政治の新たな動きが始まったのだ。