「ゼロコロナ」の最中、ある車が市場を変える?
中国語で「房車」と呼ばれる車をご存じだろうか。頭の回転が速い読者なら、たぶんすでにお気づきだと思う。そう、キャンピングカーだ。
ここ数日、インターネットにアップされた中国のいくつかのキャンピングカー関連の動画が面白い。「ゼロコロナ」という中国ならではの厳しいコロナ感染拡大阻止作戦が行われている最中に、自由自在に旅行できる「房車」、つまり居住環境を備えたキャンピングカーほど、人々の心をつかむものはない。3月下旬に上海がロックダウンに陥ってから、中国のSNSにキャンピングカー関連の動画がアップされる頻度が、かなり高くなったような気がした。
二つほど、私が興味を持った動画を紹介しよう。
一つは、やや親孝行物語のような内容の動画だ。定年退職後の両親が、ガーデンと菜園の両方を備えた居住環境のなかで悠々自適に暮らしたいという夢を見ていた。親孝行をしたい娘は、経済的にその夢をかなえられないと悟り、思い切って努力する方向を変えた。大型トレーラータイプのキャンピングカーを購入して、両親を乗せて「地の果て」と形容される青海省の青海湖までドライブしながら行く作戦に出た。動画は移動途中、成都の郊外に宿泊した時の様子を映したものだ。
娘が購入したこのキャンピングカーは室内面積が60平方メートルもあり、2DKに仕切られ、老夫婦が一室、娘夫婦はもう一室で旅行生活を送る。成都では、大きな庭を持つ民宿を貸し切りにした。父親がキャンピングカーの隅々をかいがいしく掃除する光景や、家族が好きな豚の内臓料理を作る作業風景が紹介される。走行時は収納されてしまうが、宿泊駐車時は、トレーラーの上も利用できる。だから、2階建てキャンピングカーと紹介されていた。
もう一つの動画は、自己流で改造したという乗用車タイプのキャンピングカーだ。所有者はアイデアマンの中年男性だ。車は普通のセダンタイプの乗用車で、車の外形は元のままにしたが、中身は彼の嗜好(しこう)とアイデアで、いろいろと改造が加えられた。前列のシートの背もたれを倒せば2人が寝そべることができるベッドになる。シートの一部を外せば、車内でシャワーを浴びることもできる。助手席のドアを開ければ、ミニキッチンの作業台に早変わりする。
人もうらやむ、車だけで生活をするというバンライフ(Van Life)の空間そのものだ。この生活に憧れる中国人が増えているのだが、キャンピングカーには意外な顧客層がいた。